「新・方法」第39号
寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第39号をお届けします。今号の寄稿者は、作曲家であり、元・方法主義者の三輪眞弘さんです。今月には、東京サントリーホールでのサマーフェスティバル2014において、三輪さんの新作の初演が行われます。
[寄稿]
思弁と果実
三輪眞弘(作曲家、IAMAS/情報科学芸術大学院大学教授)
ぼくにとって、方法主義への参加は自分を「またりさま」そして「逆シミュレーション音楽」へと導いた、今となってみれば運命だったとしか思えないほど重大な転機だった。
アルゴリズムによる作曲の可能性を考えてきたぼくはその頃、初期値が決まれば「未来のすべてが決まる」、形式言語で記述可能な「音楽」を模索していた。そこに、阿佐ヶ谷駅近くの薬局跡の倉庫で「第二回方法芸術祭」をやろうという話が持ち上がった。コンサートホールではなくライブハウスですらない細い路地裏の倉庫。そこで足立智美さんの後継(代替?)のぼくに一体何ができるのか。予算は基本的にない。作品を委嘱されたのではなく「方法主義者たちがやるべきことを勝手にやる」のだからそれは当然なのだが、新入りだったぼくはやはり大いに戸惑った。そこで生まれた苦肉の策が「厳格な規則に基づく儀式」すなわち「またりさま」だった。訓練を受けた音楽家ではなく、自分自身も含め仲間を集めればとにかく実行可能な、しかしゲームでもワークショップでもない、明確な「音楽作品」を考えることがぼくにとっての課題だった。方法主義が掲げる面妖な「思弁」は現実世界の中で実際に「あなたの目の前で」、「やってみせる」ことでしか意味を成さない。それは当時の同志においても同様だったと思うし、もちろん、それが芸術の存在理由なのであり、「新・方法」においてもまたそうなのだろう。
[新・方法主義者のウェブ作品]
- 馬場省吾
3つのリンクのあるウェブサイト 第十六-十八番
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/039_j.html
「3つのリンクのあるウェブサイト」第十六番は102ページ、第十七番は112ページ、第十八番は126ページのウェブサイトである。これらのサイトは全て100ページを超えている。ウェブサイトとしては巨大であり、物質性が喚起される。
- 皆藤将
オムレツ
http://masarukaido.com/newmethod/b039_j.html
本作は私のプライベートな経験に基づいて制作された極私的な作品である。最近私は最高に美味しいオムレツを作るため、練習として毎日オムレツを5,6枚は作っている。ご存知の通り、オムレツの調理法は至って単純だが、ふんわりとした美しい見た目や食感を得るためには、卵の混ぜ加減、フライパンの使い方、火加減の調整など高度な調理技術が必要となってくる。日々の練習にも拘わらず、私は中々理想のオムレツにたどり着けず、どうすればうまく作れるのか、寝ても覚めてもオムレツのことばかり考えている。今作では、私の頭から離れないそんな「オムレツ」の四文字を100000ポイントのサイズで記述した。なお、今作は、デヴァイスやOS、ブラウザなどの閲覧環境により、制作意図通りに表示されない場合がある。
[お知らせ]
- 「山手線一周」 http://7x7whitebell.net/new-method/yamanote_j.html
- 「キャッチ・ザ・インベーダー 〜人工衛星から発信される電波をキャッチするための準備〜」 http://7x7whitebell.net/new-method/invader_j.html
- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/new-method/
- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。 http://qwertyupoiu.archive661.com/
- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/
- 皆藤将はウェブサイトを更新しました。 http://masarukaido.com/
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[編集後記]
今回の寄稿文で言及されている「第二回方法芸術祭」は、2002年4月14日と28日に阿佐ヶ谷ギャラリー倉庫にて行われました。以下に記録があります。
http://aloalo.co.jp/nakazawa/200204methodfes02/200204methodfes02_j.html
また以下には「またりさま」を含む「逆シミュレーション音楽」の解説があります。是非ご覧下さい。
http://www.iamas.ac.jp/~mmiwa/XORensemble.html (M)
発行人
平間貴大 @qwertyu1357
馬場省吾 @shogobaba
皆藤将 @kaido1900
機関誌「新・方法」第39号 日本語版
2014年8月4日発行