「新・方法」第44号
寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第44号をお届けします。今号の寄稿者は、2015年2月に行われた展覧会『オントロジカル・スニップ』にも参加された、批評家の飯盛希さんです。
[寄稿]
柔らかく軽やかなトートロジー
飯盛希(美術批評)
たとえば「新・方法主義第三宣言」の153,710番目の命題「ねこは、ねこである」――あるいはその次の命題「猫は、猫である」――について、主部における「ねこ」――あるいは「猫」――と、述部における「ねこ」――あるいは「猫」――の2項は、必ずしも恒真的に同一ではなく、むしろ私たちがそう言うとき――あるいはそう言うことで――二重化し、今しも「異なりつつある différant」のである。つまり、自同律における反復には「差延 différance」が存在する。しかし、21世紀の今日に生きる者は、もはや「差異 différence」の生起する瞬間を探求する微分法的な思考に停滞していられない。むしろ、トートロジーの迷宮――あるいは輪廻――から解脱し、自由に思考を飛躍させる――まさしく「翼を授ける」ような――範型が必要である。そして、私たちは――すくなくともある種のゲームを愛好する日本人は――そのための新しい方法を会得しているはずである。ご承知のとおり紙幅は著しく限られているので、ここでは一例を紹介するにとどめるが、たとえば「そらそうよ」と言うとき、それはトートロジーのように自明にふるまいながら、しかし、まさしく論理的な形式を装備しているのである。この文法において、任意の命題は、パーレンのなかに――あたかも註釈として――書き加えられることで応用可能であり――たとえば「そら(このネコ用の歯磨き粉には)そう(ネコの嫌がる成分は含まれていない)よ」のように――、その結論の真偽にかかわらず恒真命題として言明される。軽柔なトートロジーにおける反復は、超速度で、私たちを適当な帰結へと導くに違いない。
[新・方法主義者のウェブ作品]
- 馬場省吾
重層的数字行列 第三番
http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/044_j.html
数字の行列において最小の並びは、4つの数字の2行2列での配置である。この配置において、線対称と点対称の重複を除いた、0から9までの組み合わせは1,540通りである。
その組み合わせを、数字と、表示する数字の大きさの両方に重層化させると、2,371,600通りとなる。この作品ではその全ての組み合わせを、日付と時刻によって個々に表示するようにした。
- 皆藤将
42段3列に並べられた126枚の写真
http://masarukaido.com/newmethod/b044_j.html
本作はタイトルと実際の作品が一致しない作品である。タイトルと作品は、本機関誌で発表した私のWEB作品から取った。
[お知らせ]
- 「新・方法 at space dike」2015年7月25日(土)、26日(日)、space dike、東京。http://spacedike.blogspot.jp/ (詳細は後日)
- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/new-method/
- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。 http://qwertyupoiu.archive661.com/
- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/
- 皆藤将はウェブサイトを更新しました。 http://masarukaido.com/
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[編集後記]
そもそも編集後記とは何なのでしょう。書かれる内容はさまざまで、決まった形はありません。新・方法主義第三宣言の65,850番目に、その答えが書いてありました。「後記は、後記である。」そうでした。
では、次号もお楽しみに。 (M)
発行人
平間貴大 @qwertyu1357
馬場省吾 @shogobaba
皆藤将 @kaido1900
機関誌「新・方法」第44号 日本語版
2015年6月4日発行