ENGLISH


「新・方法」第42号

寄稿と作品からなるEメール機関誌「新・方法」第42号をお届けします。今号の寄稿者は、2013年度立教大学前期開講科目中ザワヒデキ『「方法」と「新・方法」』受講者でもありました、浦野玄馬さんです。

[寄稿]

新・方法はリンクする、あるいはできない。
浦野玄馬(無職)

新・方法は「(参考)」というハイパーリンクとして影を現すが、それらは同時に常に「リンク切れ」の危険を孕む。

中ザワは平間の「TL景」を「取捨選択しない」「記録のための記録」に特徴づけられる「新しい風景画」と表現するが(註1)、それは裏を返せば無差別的記録機械=カメラの存在を示している。その意味でTL景とはむしろ風景写真である。写真を固有名、すなわち確定記述に還元しえない純然たる名付けと関連付けるパースに倣えば、風景写真としてのTL景もまた被写体の如何を問わず、ただ目前の外界にリンク=名を与え、そして同時にそのリンク先の滅却をさえ許容する。これを新・方法の活動一般に敷衍すれば、新・方法とは「リンクのためのリンク」である。それは方法同様同語反復の形式をとりつつ、常に外部へと逸脱していく。

馬場のリンクは参照の自己封じ込めによる「脱・物質性」を追求しつつその不可能性を暴露する(第38号)。

皆藤のリンクは「リンクする、あるいはできない」(第17〜19号)。時にリンク先は横浜のゴミ箱に廃棄される(第40号)。

平間の作品無き題名は純然たるリンクとして、新・方法のリンク切れ一般を予示している。

昨年出版された中ザワの『現代美術史日本篇 1945-2014』終盤に、新・方法は控え目に現れる。歴史化とは時間の空間化であり、無時間化された個々の事項の配列から成る時系線をさらに改行と対句法によって二次元図表化する中ザワの循環史観はその極致である。「芸術のための芸術」としての方法の作品はこの歴史観と相性好く、方法は無時間的自律性によって自己の歴史化を可能にする。

翻って輪郭を逸脱し続ける新・方法のリンクは、歴史化の前提を脅かすアナクロニックでユートピックな異物に他ならない。それは私たちの手にぬめりの余韻だけを残してその正体は宙吊りのまま逃れ続ける水底の魚のようだ(第17号)。「ナマズ」改め「ドジョウ掬い」中ザワは循環史観という歴史格子のザルを手に、彼の鬼っ子達を掬い上げることはできるのだろうか。

 
註1. 中ザワヒデキ「ウォーホルの遺伝子を継ぐ、日本の記録芸術の現在」『美術手帖 第1000号』美術出版社、2014

[新・方法主義者のウェブ作品]

- 平間貴大

目標に達するための...

http://hrmtkhr.web.fc2.com/new-method/042_j.html

解説無し

- 馬場省吾

重層的数字行列 第二番

http://7x7whitebell.net/new-method/shogobaba/042_j.html

ウェブサイトの形式上では、表示されたものに対して動的な変化を扱うことができる。今作では、スクロールの位置によって表示される数字と、その大きさが変化する。
そこでは、変化した記号の意味と視覚的要素は画面上では見えないため、見えていない部分の数字と大きさがどのように変化をしているかを認識することができないというパラドックスを含む。

- 皆藤将

アップされていないウェブ作品

http://masarukaido.com/newmethod/b042_j.html

前作で私は小説の一節を提示することによって言葉自体を作品にしようと試みた。だが、改めてその作品を見てみると、私の制作意図と作品から受ける印象に違いがあるように感じた。そこで今作では、本誌第36号や第38号で私が発表したウェブ作品のように、ウェブという媒体を基として、タイトルとURLと解説、つまり言葉および文字と空白のウェブページによって成立する作品を制作した。

[お知らせ]

- 「新・方法 at スーパー・デラックス」 http://7x7whitebell.net/new-method/superdeluxe_j.html

- 「新・方法」はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/new-method/

- 平間貴大はウェブサイトを更新しました。 http://qwertyupoiu.archive661.com/

- 馬場省吾はウェブサイトを更新しました。 http://7x7whitebell.net/

- 皆藤将はウェブサイトを更新しました。 http://masarukaido.com/

- このEメール機関誌の配信をご希望のかたは新・方法主義者にご連絡ください。

- このEメール機関誌は転送自由ですが、著作権は放棄されていません。

- このEメール機関誌が迷惑メールに分類されてしまうことがあります。お気を付け下さい。

[編集後記]

寄稿文中にあるTL景とは、Twitterの平間アカウント(@qwertyu1357)から見えるタイムラインを、ある時間から遡り一定数まとめたものです。こちらにTL景をまとめたページがあります。 http://qwertyupoiu.archive661.com/works/tl-scape.html (M)

発行人

平間貴大 @qwertyu1357

馬場省吾 @shogobaba

皆藤将 @kaido1900

機関誌「新・方法」第42号 日本語版

2015年2月4日発行